剣尾根R4

日付 2013/5/2~5   参加 CL高橋、塚越  Photo Commnent TSUKA

剣岳を富山側から登るのはちょうど10年前の春の小窓尾根以来である。当初はその小窓尾根を予定していたが今年になって入会したベテランクライマー武藤さんの希望も有り、「条件揃えばR4をやってみよう」ということに。

ところがその武藤さんはプレ山行の西穂~奥穂縦走で足を痛めて、早月尾根隊に加わり、R4隊は2名となった。

結果的には条件に恵まれ完登できたが、今回は気持ちの浮沈みの激しい山行であった。

5月2日  06:45馬場島 11:30剣尾根末端 14:30 R4基部 17:00幕営
前夜馬場島に到着した時は本降りの冷たい雨、テレビの天気予報は5月4日まで寒気が居座る予報で入山前からテンション下がりまくり。

翌朝一転して晴れたので、予定どおり山岳警備隊に届けを確認した後、スタート。

白萩川取水口は手前のスノーブリッジで左岸に渡り巻いた。それ以降タカノスワリのゴルジュは全て残雪が残っており渡渉や高巻きは不要であった。
池の谷に入る前に一応、ヘルメットを被りゴルジュへ突入。大きなデブリの後はあったが、GW前半の雪が落ちたものと思われ、また通過中も雪崩の音は皆無で問題無く突破できた。

タカノスワリ
池の谷ゴルジュ

問題があったのは当方の体力で重荷に喘ぎ、足首から脛のラッセルは途中から高橋に任せきりとなった。
剣尾根末端を過ぎたあたりからは、寒気に加え時折、雪交じりの風が吹き、ダウンを着用し、厳冬期と同じ服装。不安はますます助長。


正面が剣尾根末端

ガスで視界悪く「あれがR10、R7」だと言いつつ、R4のルートを特定するまではかなり、時間がかかった。
ところがここで馬鹿げたミスをしでかしてしまった。ベースとなる三の窓は池の谷をそのまま突き上げれば良かったものを、ルートの概念図にとらわれ、小窓尾根のルンゼを間違えて登ってしまった。


翌日R4から見た、間違えて登った小窓尾根のルンゼ

間違えに気付いた時点で、このまま小窓尾根に出てしまおうかとも考えたが、最上部に岩場が出てきてそれは断念しそこからクライムダウン、R4基部にテントを張ることに。あのまま小窓尾根に出れてしまったら、今回のR4は無かった。
その晩は風雪も強まり、明日もこの条件ではR4無理と話しあった。また今回の寒気による装備面の準備不足も有りガスを節約しつつ、反省会状態でまたしてもテンション下がりまくり。

間違えルンゼを下降中

5月3日 05:30 R4登攀開始 13:00ドーム頂上 13:20コルB下降 14:10 R4基部
翌朝3時起きしテントを出ると無風で晴れ間もあった。この天気であればと登攀準備し、いよいよ1ピッチ目へ突入。


朝の池の谷
R4全景
ルート解説(ぶなの会の記録より引用)

ところがこの1ピッチ目が今回のルートの核心部。まずミックス壁を20m斜上した後、直上するピッチだが、出だしから壁がボロボロ、まともな支点がとれない状態で、危ういバランスクライミング。カムを3箇所、ハーケンを2枚打ち込んだが、出だしできめた金キャメ以外は落ちたら、吹っ飛んだかも知れない。

ロープを30m近く出したところで灌木を発見、これを掘り起こすと腕の太さも有り、ようやく生きた心地がした。
まだ1ピッチ途中、直上するベルクラにも辿りついていなかったが、ここでピッチを切ってしまった。

斜上ルートなので、セカンドも冷や汗ものだったらしいが、ノーテンションでカム、ハーケン回収した高橋を迎えいれた。頼もしい男だ。
予想以上の悪さにここで敗退し懸垂も考慮したが、とりあえず気を取り直し、目の前の大岩を回り込んでみた。


1ピッチ目のフォロー

本来そこは薄いベルクラで悪いと言われている箇所だが、開けてビックリしっかりしたアイスと堅雪で埋め尽くされており、オーバーに言えば「地獄から天国へ」と思えたくらいであった。

気持ちは一気にハイテンションとなり、驚喜した状態で高橋を迎えた。
この頃、剣尾根末端ベースの後続パーティーが来ており。彼らは1ピッチ目は1段下の正規ルートを登り、そこはそれほど悪く無かったらしく。2ピッチ目で追いつかれた。


1ピッチ目の後半(緊張感からの解放で全景は撮り忘れ)
1ピッチ目後半のフォロー

核心の2ピッチ目の80度程のアイスは高橋に譲り、それ以降は快適なアイスクライミングとなり、特に問題となる箇所は無く、つるべで登った。

2ピッチ目の出だし
2ピッチ目、3ピッチ目は50m一杯で繋ぎ、ハング下のビレイ点へ
4ピッチ目のフォローと後続パーティー
5ピッチ目の出だし

6ピッチのスタカットを終えたところで前日に続き、またもやミス。ドームへの雪壁で手前のルンゼをつめてしまった。
とりあえず、稜線で食べ物を口にした後、クライムダウン。

最終ピッチを越えた雪壁、正規ルートは最奥のルンゼ
間違えて手前の雪壁を登攀中
正規ルートに戻ったが、こちらも最後、稜線に出るところが若干悪く、間違えている間に抜かされた、先行パーティーに続いてロープを再度、結び登った。

雪壁を終え稜線に出るところ、ガスも出始めた

稜線に出た後はドーム頂上までは指呼の距離だが、その頃には厄介なガスが出始めていた。下降点のコルBはドームからすぐであったが、だだっぴろい雪壁上でどこを降りれば良いか悩ましかった。

ドームを越えR2をクライムダウン

過去の記録ではコルBからR2の下降で苦労した話しは無かったので、とりあえず視界の効くところまで降り、それを繰り返した。
ようやく池の谷右俣が見えてき、ホットする。

先行する高橋が池の谷に着くところ

R4基部まで戻りテントを撤収、後続パーティーと完登を労いあった。
明日彼らは再びR2を登り返し、剣尾根上半部を登るとのこと。

その後は全装備を背負って、1時間程掛け、三の窓まで引越した。

ようやくR4基部のテントに戻る
貸切状態の三の窓

三の窓には昨日入った小窓尾根2パーティーがいると思われたが、この夜は我々の貸切状態であった。
翌日聞いた話では三の窓まで届かなかったとのこと。視界が悪くルートファインディングに苦労したのであろう。

テントに入った後は祝杯を上げたことは言うまでもない。

翌朝のチンネ

※クライミングノート
1.1ピッチ目にまた残置ハーケンは見つけることは無かった。(そもそもルートを間違

  えていた。)
2.ギアは1ピッチ目でキャメロット#1、#2、エイリアンのオレンジ。ハーケン2枚。
3.2ピッチ目以降ほぼ支点はアイススクリュー。8本用意したが、ビレイ点は全てスク  

 リューなので、適正な数であった。
4.残置ボルト、ハーケンは数か所程度。初登時に打ったと思われる、「でかリングボ

 ルト」が印象的であった。(2ピッチ目以降)
5.スクリューを完全に埋めれるほど、厚い氷は少なく、ビレイ点も含めタイオフを多

 用。 8本のスクリューの内5本程、刃先を駄目にした。

5月4日  07:15三の窓 08:45剣岳山頂 12:30早月小屋  
この日も朝は視界は良好だったので、チンネや小窓の王を背景に写真を撮り合った後、本峰へ向かった。ちなみに高橋は今回が夏を含め、剣岳初見参だったが、山頂に着いた頃には例によってガスの中となってしまった。



「高橋君、ガスの中の初剣岳」

山頂では別山尾根、早月尾根から、他パーティーが続々と登って来た。写真を撮り終えビールで乾杯している頃、早月隊の7名と予定どおり合流した。その差約10分程、絶妙なタイミングであった。

その後は早月隊と助け合いながら、無事早月小屋のベースに下り、我々のテントも張り、昼間からの大宴会。
お互いの健闘を称えるつつテンションは最大に高まった。


早月尾根を下降


 
5月4日 05:15早月小屋 08:00馬場島
馬場島に無事下山。途中スーパーで朝採りの白エビ、ホタルイカ、ヒラマサの刺身を食しつつ、夕方には帰宅。

 

今になって振り返ってみるとルート間違え他、準備不足有り反省しきりである。

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