2017.11.24~25 八ヶ岳 小同心クラック【楽しい系山行】


日付 2017/11/24(金)~25(土) 天候 風雪 参加 海保(CL)、山口(投稿)
 アルバム :https://photos.app.goo.gl/qfLF0R4CbFzQjSA13


行程:11/24 9:00湘南地方 - 12:45赤岳山荘 - 14:20赤岳鉱泉
   11/25 6:00赤岳鉱泉 - 7:50大同心基部 - 9:00小同心クラック取り付き - 12:00小同心の頭 - 12:50横岳頂上 - 14:20大同心基部 - 赤岳鉱泉(まったり)- 19:00赤岳山荘駐車場

八ヶ岳に冬がやって来た

風が強いのが気がかりだったが、2人とも初めてとなる小同心クラックへ冬山始めをしに行くことに。
数日前までは岩も露出しているほどの積雪量だったらしいが、山行前日に完全なる冬山になったという情報を見て慌てて装備を見直したり見直さなかったり。

悪天候による転進も視野に入れてアイススクリューを取りに戻ったりしてなんやかんやで9時頃湘南地方を出発。
道中、かなりのポカポカ陽気と紅葉に染まる景色に、もしかしたらまだ八ヶ岳は冬山になってないんじゃないかとも思ったが、小淵沢ではしっかり雪が降っていた。
雪の舞う小淵沢の道の駅でギアチェックと装備を整えておいたので、更に冷え込む赤岳山荘の駐車場をサッと出発することが出来たのは非常によかった。


赤岳鉱泉までは凍結箇所もほぼなく歩きやすい。堰堤を越えてくるとしっかり積雪。
冬山がなんと数年ぶりという海保さんも大変嬉しそうだ。

アイスキャンディはまだスケスケ

大同心稜への入り方が2人ともイマイチ分からなかったので偵察話も出ていたが、テントの設営を終えたら酒の誘惑に勝てるわけもなく。初日の行動『入山』のみで終えることに決定。まぁシーズン始めだしね?


ふと持ってきたガス缶を見ると、今年の春に予定していたが葬り去られた劔の小窓尾根用に準備していたもので懐かしくなった。
厳しい劔で使用することを想定していたお前が、まさか赤岳鉱泉の暖房のついた自炊室で使われるとは。


でもしっかりと仕事を果たし、海保さんお手製のキムチ鍋はシメの雑炊まで絶品で最高だった。チーズ持ってくればなお良かったね。

結局小屋の消灯までずっと居座り、クライマーたちと情報交換。ヤマテンによると明日は−15℃の風速25mとかでちょっと日和る。
小同心クラックの1ピッチ目までだったら懸垂で降りてこられると教えてもらったので、取り付きで判断して1ピッチ目だけ遊ぶのも致し方ないかという話になり、温泉のハシゴも視野に入れてこの日は就寝。

冬の八ヶ岳の夜の冷え込みに怯えていたが、雪はずっと降っているものの一晩中無風で薄いシュラフでも問題なく寝ることが出来た。


翌朝は4時起床、6時出発。


前日に大同心稜への行き方を偵察しなかったので案の定あさっての方向へ進んでしまったが、某アイスクライマーのつけたトレースを見つけてなんとか大同心稜へ辿り着く。
朝ごはんのカロリーをそれだけで消費してしまった。


大同心基部。ガスッ。
強風も吹き荒れて八ヶ岳の厳しさとご対面。お久しぶり。
白い大同心を目の前にして私はナエナエだったが、「オンサイト同士で行くルートは楽しい」とウキウキの海保さん。
ここでアイゼンと装備を整え小同心クラックまでしばしのトラバース。


トラバースは1箇所だけ悪かった。
前日にガイドからトラバースに気をつけてと言われていたので多少覚悟していたが、まさかシーズン始めから“アイゼンの前爪を信じてトラバース”みたいなことをしなきゃならんとはこれっぽっちも思わなかった。

「こんなはずじゃ…」と弱音を吐く私の話を、最高に楽しそうに聞く海保さんの顔を見て、こりゃ1ピッチ目だけやって帰るわけないな、って瞬時に思いました。はい。


小同心クラック取り付き。
貸切!わーい!

1P目 海保

当初は1ピッチ目を私がやる予定だったがその話も暴風雪に吹き飛ばされ、1ピッチ目 海保リード。
ガスで視界が利きにくかったが、そこは流石『錫杖岳は冬しか行ったことがない』でお馴染みの方。スムーズにロープを伸ばして行く。
トポでは40mとあったが、左上してチムニーに入る手前の25m出したところで良い支点があったようで1回切った。


フォローだったので安心して追いかけたが想像していたよりも難しかった。
寒波の影響で所謂『冬壁』チックになってしまった小同心を、テムレス1枚というアホンダラ装備で挑んだので手が即凍りつき、ホールドの感覚が全く分からない状況に加え、岩もツルツルでヒヤヒヤした。ちなみにテムレスは、今季よりアイスキャンディでのビレイ時使用が禁止になりました。シクシク。
リードしてたらシーズン始めがシーズン終わりになってたかも。

でもね、私、知ってます。1ピッチ目終了点に着いたら、リーダーが何て言うか。


「小同心クラック問題なくいけるね。」


ほらっ。

「ぜっ、絶対言うと思った〜w」

2P目 海保
そんなわけで1ピッチだけやるとかツルベの話も太陽と共に消え去って、2ピッチ目 海保リード。
いよいよチムニーへ。
出だしが傾斜のあるチムニーを直上していくが、スノーシャワーでまともに見ていられない。
声は聞こえなかったがロープの動きで判断してビレー解除してフォローで追いかけるも案の定出だしで難儀。モタモタしているとビレーヤーにも凍傷の危険性があるので勇気を出して一歩出すべ、と左足に乗り込もうとしたら一瞬ガスが晴れて大露出された八ヶ岳の景色が左目から飛び込んできた。赤岳鉱泉とか丸見えで。

いきなりの高度感にちょっと焦って1ピッチ目終了点まで自ずと戻ったよね。
極寒ビレー本当にごめんなさい。

小同心クラックという名のわりに、実態はチムニーだが一箇所だけフィストが決まるところがあってなんとなくニヤリとした。
上からのスノーシャワーとチムニー故、下から巻き上げられる雪でシッチャカメッチャカになったが、ステミングを駆使してなんとかチムニーを抜けたところにあるしっかりとしたペツルの終了点に到着。
恐らくここが本来の1ピッチ目終了点。


3P目 海保
3打席連続安打よろしくぅ。

この時は分からなかったがここは右からも左からも行けるらしく、左は傾斜のあるフェースを直上していくとリッジ上に出られそのまま小同心の頭に繋げられる。
右は2ピッチ目のチムニーに沿う感じで登って行き、リッジの一段下のバンドに出る。
今回は右から言ったのでリッジの下のバンドに出て、そこで一旦切った。ロープの流れを考慮してなのか、せめて小同心の頭までの簡単なピッチくらい私にやらせようとしてくれた海保さんの采配なのかは分からないが、4ピッチ目 山口リードで頭まで。


4P目 山口
トラバースからリッジに乗り上げるまでプロテクションがとれず震えたがなんとか頭に到着。
しかし頭に支点が見つけられず右往左往しまくっていると、振り返ったら海保さんが小同心の頭に立ってて「えっ。」ってなった。
ビレーヤー、痺れを切らして来ちゃってた。

「・・・。」

結局予期せぬコンテになり、申し訳なさすぎて超気まずかったがそのまま横岳頂上直下までコンテ続行。


5P目 海保
時間もおしてるからビレーしなくていいよ〜と言い、横岳頂上へのピッチをフリーソロで進む海保さん。
ビレーしてないのでのんきに写真撮影。今回、カメラのバッテリーが死にまくってまともに撮影が出来なかった。

ちなみに最終ピッチは普通にロープを出すところで、2〜3箇所にボルト打ってあったし、1箇所バランシーな感じになる悪い部分があった。おそろしや~。

登りきると目の前に横岳標識が飛び込んできて思わず感極まったが、速攻で目が凍り始めたのでグッと堪えた。
バナナで釘が打てる世界は、半泣きも許されない世界でもあった。

横岳頂上

ピークを踏むのはやっぱり最高。

それもこれもコンディションの悪い小同心クラックにも関わらず、私という(ザックを入れて)70キロ近い物体の荷揚げをしてくれたリーダーのおかげです。
転進とか、1ピッチだけとか妥協しなくて本当に良かった。温泉のハシゴとかもうこの際どうでもいい。鹿の湯1本だけで全然いい。

ミスルート

最短下山するべく大同心稜を目指す。
視界が利かず、一つ手前のルンゼを下ってしまい登り返して本来の下降点へ。


正しいルンゼを下っていくと非常に頼りない懸垂支点が急な岩場にあり慎重に下る。その後もう一回懸垂をし、全2ピッチで今朝つけた小同心までのトレースと合流。

ここで八ヶ岳は青空となる。


ここで晴れるか―、と思ったが小同心では雪煙が舞っていたので上ではまだ強い風が吹いているのだろう。


横を見ると、彩雲のかかった神秘的な阿弥陀岳も。


***


今回始めて冬壁に近い状況の中で登攀をして、シーズン始めから私にはなかなか過酷だった。かと言って、コンディションの良い時に自分が問題なくリード出来ていたかと言われたら全く自信がなく。
登攀スキルだけでなく装備の面でも反省点多く、手か顔のどちらかは間違いなく凍傷になるけど仕方ないか、と思いながら登っていた。今回時間がかかってしまったけど2人共凍傷にならなくて本当に良かった。

しかし今回のことを『楽しい系山行』と表現した海保さんにはお手上げである。


まぁこんな感じで冬山始めしてきました。

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